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140文字SS:Splash☆Star【1】 1.満&薫 「どうでもいいわ」/一六◆6/pMjwqUTk 「ねえ薫。咲と舞が、夏休みの計画を話してたわ」 「なんて?」 「咲は、みんなで海に行って瓢箪岩に登りたいって。舞は、みんなで花火というものを見に行きたいって。とっても綺麗なんですって。ねえ、薫はどっちがいい?」 「どっちも……コホン。どうでもいいわ」 「ふふっ、そうね。どっちもいいわね」 2.咲舞で【細い体を / 指先が】/ねぎぼう 咲を見つけ、スケッチブックに細い体を押し付けるように抱えて手を振る舞。 「さき~、こっちよ」 「まい~、今行く」 咲は息急き切って舞へと駆けていく。 「帰ろっか」 「うん」 手を繋ごうとして指先が触れ合う。 「ずっと、待ってた?」 「ううん」 描いていると時も忘れる少女。 そんな手をぎゅっと握る。 3.[競作2015]秘すれば花/アクアマリン 「ねえ舞」 「どうしたの?薫さん」 「夏なのにタートルネックの服着て暑くないの?」 ギクッ!! 「そ、そ、そんな事ないわ!トネリコの森って夏でも涼しいし、それに私ってちょっと寒がりだし」 「ふーん、ならいいけど」 (さすがにキスマークの跡を隠すためだなんて、いくら薫さんでも言えないわ) 4.[競作2015]満&薫「大切なこと」/一六◆6/pMjwqUTk 笑顔と挨拶が大事――そう教えて貰った。 それってお店にとって大事なんだろうと思っていたけど、 私にとっても大切なことかも。 お客さんに「ありがとう」って言われると、何だかとても嬉しいから。 ただ……。 「何してるの?」 「ううん、何でも」 それを薫に知られるのが、どうしてこんなに恥ずかしいの? 5.[競作2015]咲&満「大切なお客さまへ」/ねぎぼう 「パン好きはイイ人ナリ!」 咲が無邪気に言った。 「満も!」 こんな私の目の前で輝く、向日葵の花はちょっと眩しすぎる。 (アイツは……) 「そう言えば、チョココロネたくさん買ってくれた ガタイのいいお客さん、来ないなあ…… 今でもどこかで食べていて欲しいなあ」 咲の光はきっとアイツにも届く。 6.[競作2015]咲⇒舞「大切なこと(伝える)」/一六◆6/pMjwqUTk 「力一杯、一生懸命、そして楽しく」 お母さんが教えてくれたこと。 それってソフトボールだけの話じゃないよね。 だから舞に伝えたい。 文化祭のモニュメントのデザイン、とにかく楽しくやってみて、って。 楽しく描いたんだなって伝わるところが舞の絵の魅力だし、 何より舞には、楽しく描いて欲しいから。 7.[競作2015]舞⇒咲「大切なこと(受け取る)」/一六◆6/pMjwqUTk 「とにかく楽しくやってみて」 カボチャの頭が私の顔を覗き込む。 いつもそう。 困っている時、いつも私の手を取って、一番欲しい励ましをくれる。 咲だって、決勝戦で辛い思いをしたばかりなのに。 そう思ったら急に涙が溢れて、慌てて笑った。 ありがとう、咲。頑張るね。 何だか、大丈夫って気がしてきた。 8.[競作2020]S☆S『そのつきをすけっち』/金丼亭猫好 「舞、それ望遠鏡? 運ぶわ」 「ありがとう、満さん」 「それで、今日はどの星を見るの?」 「月のスケッチよ‥満さん?」 「なら、望遠鏡はいらない」 「え?」 「目で見りゃいい、だよね。満☆」 「咲?」 「ほら、スケッチしてやんなよ。満、ポーズは?」 「餅つきくらいなら‥」 「いらないから、もう!」 9.のうきん/かおす SSで小咄 「おいおまえ達! チャイコフスキー、ドストエフスキー、 チョムスキー、カンディンスキー、キントレスキー、タルコフスキー、アルペンスキー、 モルトウイスキーヤマザキくん さあ、私はどれだと思う?」 「うあー、マジで脳味噌まで」 「咲ってば..」 10.SSで小咄 舞も大変/かおす 「タコがたばこをくわえたらなーんだ」 「はい? 咲、いきなりなーに?」 「あ..」 「咲はどうしたんだ?」 「タコが入れ歯をしたらなんになる? のつもりだったのよね?」 「う~」 「で、なんになるんだ?」 「みちる~!」 「どうしたみちる」 「かおる、実は咲が…」 「やんないでいーから!」
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SS47 ギー太も首ったけ 高校・大学と進んで、私が社会人になって3年目になった。 HTTのみんながそれぞれの道に進む中、私だけ就職先も決まらず、とりあえずバイトでもしようと思ったら偶然小さな楽器店から求人が出ていたのがすべての始まりだった。 「ああもう!これってピックアップ断線してないか?中はぐるの苦手なんだよな」 楽器屋さんで働けば“好きなドラム”と関われると思っていたけど、実際はギターの調整がメインですごく苦労した。 「田井中さん、中はぐるのは僕がやるから。スタジオのドラムのペダル見てくれないかな?」 「あ、マスター。ドラムなら任せてください。じゃあ、これお願いします。リアが極端に音が小さい症状です」 でも、店の主人は良い人だし、最近はドラム関係の仕事も増えてきてなんとか続けられている。 「マスター。スタジオの確認終わりました。あれ?どうかしましたか?」 スタジオでの仕事を終えて戻ると、マスターがぼ~っと立っていた。 「あ、ご苦労様。たいしたことじゃないんだけど…やっぱりたいしたことかな・・・」 「何かあったんですか?」 「さっきからあのギター持った人が店の前を行ったり来たりしてるんだけど、もしかしてあの人“平沢唯さん〝じゃないかな?」 マスターが指さした店の入り口に目をやると、帽子を深くかぶった小柄な人がギターを手にウロウロしていた。 「ああ、平沢唯ですね」 10年近く友達なんだから間違えるはずがない。 「うちみたいな小店に何か用かな?プロのミュージシャンなんて来たことないよ…田井中さんに任せた」 マスターはオロオロしながら修理中のギターを抱えて作業室に消えていった。 「そう言えば、マスターにまだHTTのこと話してなかったな…で、お客さん、いらっしゃいませ」 対応を任せられた私は自分から店の扉を開けて唯に話しかけた。 「りっちゃん?わ~りっちゃんだぁ!」 「ぐぇ…」 唯は私だと解るとギターごとタックルしてきた。 「しかし、いきなりどうしたんだよ?あ、この前出たアルバム良かったぞ」 大学卒業後、HTTは活動休止になったけど唯だけは積極的に音楽活動を続けて、遂に昨年メジャーデビューを果たしていた。 「ありがとう。りっちゃんも正社員になったんでしょ?おめでとう」 「ありがとさん。澪やムギと比べたら安月給でフル稼働してるけど、毎日楽しいよ。それで、今日はどうしたんだ?」 お互いに近況を報告し合ってから本題を切出した。 「うん。ギー太の調子が良くないみたいで、修理お願いしたいなって」 唯が手に持っていたギターを私に手渡した。 「そういう事か。うちのマスターはギターのリペア上手だぞ。大至急頼んでやるからちょっと待って・・・」 「りっちゃんにお願いしたいな」 ギー太を持ってマスターの居る部屋に行こうとしたら、唯がそう言った。 「いやいや、私電装関係苦手だし、ネック調整とか弦交換しかできないぞ?」 「それで十分だよ。お願いします!」 りっちゃん隊員ごっこを思い出したかのように唯が敬礼する。 「おいおい、それだけならそろそろ自分でできるようになろうぜ…プロのミュージシャンが泣くぞ?」 「いやぁ~ギー太がりっちゃんじゃなきゃ嫌だって言うから」 「ハイハイ」 唯を軽くあしらいながらギ―太の状態をチェックしていく。 電装関係はガリやノイズも無く完璧だったが、ネックが反っていたのとオクターブチューニングがずれていた。 「唯、お前弾いた後弦どれくらい緩めてる?ちょっと逆反りしてたから緩めすぎかもしれない」 「逆反り?」 「ごめん。聞いた私が悪かった…とりあえず、ペグ一巻半くらい緩めとけば良いから」 「わかった。一回と半分回せば良いんだね」 「そうそう。良し、オクターブチューニングも完璧!弾いてみろ唯」 調整が終わったギー太を唯に渡すと、懐かしいメロディが店の中を包み込んだ。 「U&Iだなそれ。懐かしいなぁ」 「完璧だよ。りっちゃん!ギー太も喜んでる」 「そりゃ良かった。私も平沢唯のギターを調整したっていう経歴ができて嬉しいよ」 「ねぇりっちゃん…これからもギー太の面倒見てくれる?」 HTTの曲に耳を傾けていると、ぽつりと唯が呟いた。 「おう。楽器屋店員りっちゃんに任せとけ。何時でも無料で見てやるよ」 私は得意げに返す。 「じゃあ、奥さんになって私の面倒も見てくれる?」 「任せと・・・え?」 end
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彼女とこういう関係になったのは、三年ほど前のあの日からだ。 連絡もなく訪ねてきた彼女を部屋に通し、その様子を見て、ゼロは全てを理解した。 二十年以上も付き合いがあれば、家族のように相手の事が分かる事もある。 言葉や態度に出さなくても彼女の全身が、とても傷ついているのだと雄弁に語っていた。 その日から二日間、彼女はこの部屋に泊まった。 それが関係の始まりだった。 どちらからでもなく、互いが互いの体を欲した結果だ。 男女の深い愛情の果ての行為でもなく、ただ性欲を満たす為の行為だけでもない、そんな関係。 性欲のみで繋がればどこか空しさが残るものだと思うが、彼女との行為に不思議と空しさは感じなかった。 久しぶりに任務を終えて帰国した彼女を部屋に迎え、いつも通りその行為を始めた。 「少佐……」 腕の中で彼女が身じろぎをした。きつく抱きしめ過ぎたので苦しかったようだ。 「すまない。しかしその眼鏡、邪魔だな……」 腕から彼女を解放し、変装用に彼女がしていた眼鏡を取ってサイドボードの上に放り、 そのままベッドに組み敷くと、彼女の唇から溜息が漏れた。 指先が伸び、子供の頭を撫でるように髪を優しく梳く。 「珍しいわね、あなたがこんな風に私を抱くなんて」 別にルールを作ったわけではないが、いつもは彼女がゼロに触れるまでは行為を始めないので 少々違和感を感じているようだ。 ゼロからの深いキスを受け入れながら、熱い溜息交じりの声で呟いた。 「嫌なら、拒んでくれても構わないが……」 「別に、嫌ではないわ」 言いながら、彼女の手が腰から足の間に伸びてきた。 ベルトを外し、衣服の前を寛げ、するりと中へ差し入れられる。下着の中で熱くなっているそれに触れ、 慣れた様子でそこへの愛撫を始めた。 適度な力で握りこまれ、ゆっくりと上下に擦り上げられ、そこは熱を帯びていった。 「もうこんなに熱くなって……」 ゼロも朴念仁ではないので年相応に経験も積んでいたが、こうして彼女に触れられるのが一番好きだった。 何度も体を重ねお互いのいいところを知っているという事もあるのかもしれないが、どこか優しさの感じられる セックスをする彼女を抱くのが一番心地よかったのだ。 別に愛されているとまでは自惚れていないが、どんな種類であれ女性からの好意が感じられるのは男として 誇らしく、嬉しい事だった。 「君の体の方が……熱くなっているじゃないか」 着ていたタイトスカートのファスナーを下げて脱がせ、下着の隙間から女の秘所に指を差し入れると、そこは すでに熱く熟れていた。 「久しぶりなのよ……キスするのも、セックスするのも」 彼女の蜜で濡れた指を動かすと、そう言って瞼を閉じ、息を乱した。 お互いのシャツ越しに重なっている胸から聞こえる鼓動が早くなってゆく。 布越しの感触がひどくもどかしく感じられ、ゼロは空いている片方の手を使って彼女のシャツのボタンを外し、 そこに手を差し入れた。 もう四十をいくつか越えたはずだが、彼女の肌は張りがあり、驚くほど滑らかだった。 「私もだ、最近は君以外の女性を抱く気にならなくてな」 乳房の先端にある尖りを指先で弄ぶと、彼女の唇から初めて甘い声が漏れた。 「相変わらず良く喋る男ね……こんな時くらい黙っていてもいいのよ?」 ゼロの性器に触れていた手を離して背中へと回し、強い快感に耐えるようにそのシャツを掴んだ。 挿入すると、彼女のそれは前に抱いた時と同じように、柔軟にゼロを受け入れた。 包み込むように柔らかいが、時折痙攣をするように締め付け、高めてゆく。 ゆっくりと腰を動かし突き上げ始めると、シャツを掴んでいた手が離れ、ゼロの背中を 労わるように優しく擦った。 「最近仕事が立て込んでいて疲れているでしょう? 私がするわ」 近く控えているミッションの準備に追われ、自宅にもろくに帰れない日々が続いている のを知っていたようだ。 返事を待たずに繋がったまま体の位置を変え、横になったゼロの上に乗ると腰を動かし始めた。 何事においてもそうだが、彼女はいつでもセンスが良かった。 騎乗位で繋がるのは初めてだったがお互いのいい場所を知り尽くしているかのように体を動かし、高めてゆく。 腰が揺れると、それに合わせてシャツの隙間から張りのある豊かな乳房が揺れるのが分かった。 快感のせいかブルーの目は伏せられて唇は薄く開いており、シャープな輪郭を描く頬は上気して色づいている。 普段は見ることのない女らしく妖艶な様子に、ゼロは思わず息を飲んだ。 「君はいつでも優秀だな。たまには下手な君も見てみたいものだが……」」 何気なく呟いたゼロの言葉に、彼女は笑った。 「下手な方が、あなたの好み?」」 楽しそうに笑い、顔を近づけて額にキスを落とす。久しぶりに見た笑顔に、つられて笑いが漏れた。 「ノーコメントだ。どのような回答を出しても誤解を生みそうだからな……君の想像に任せるとしよう」 腰に手を添えいたずらに動かすと、綺麗な唇から声が漏れた。 それに合わせるように彼女も腰を揺らし、熱が高まって行く。 気持ちが高まると声が出なくなるくせは以前と変わらないようだ。彼女の唇から漏れる声が止み、 お互いの荒い呼吸音だけが部屋に響く。 断続的に強く締め付けられ、彼女が達したのが分かった少し後、ゼロもそれに続いて自らを解放した。 しばらく繋がったままで余韻を楽しんでいたが、煙草が欲しくなり、サイドボードの引き出しに手を伸ばした。 箱から取り出して火を点けると、横から白い手が伸びた。 「いいわね……私にも一本くれない?」 ケースから取り出して咥えさせ、ライターの炎を手向けると、彼女は上体を起こして顔を寄せ、煙草に火を点した。 煙草を吸う女はさほど珍しくないが、それが似合う女はあまり見た事がない。 そう思っていたゼロだが、スタンドの弱い明かりに照らされた彼女の横顔は素直に美しいと感じた。 「今夜は泊まっていくか?」 ゼロの問いに彼女は首を軽く振り、無造作に金の髪を掻き上げた。 「そうね……でも明日の朝に帰るわ。私も例のミッションに向けていろいろ準備があるのよ」 ふっと煙を吐き、青い目を伏せる。その横顔になぜか言い表せない不安を感じ、ゼロは言葉を続けた。 「そうか……次はいつ来る?」 その言葉に、彼女は笑った。 「今夜は随分積極的なのね……私に気でもあるの?」 冗談めかした言葉で返され、ゼロはばつ悪そうに頭を掻いた。 「二十年前にはな……今は少し違う感情だが」 恋愛感情でもなく、友情でもない。 この感情をうまく言い表す言葉は知らないが、大切な存在である事は確かだった。 「それは初耳ね……でもあの頃は、良かったわね」 言いながら顔を背け窓の外を眺める彼女に、ゼロはかける言葉を失った。 ゼロが彼女の心に影を落としているものが何であるか気付くのは、この日より二週間後、バーチャスミッションの後になる。
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SS50 いつか 戦ばかりが続いていた時代のこと。 男は戦にかり出され、女が家事や国事を行うことが当たり前になっていたのだが… そんな時代に三味線片手に旅をする少女が居た。 「ひ~ふ~み~よ~ご~は~ん♪」 少女は名前を唯といって、故郷に妹を残して出稼ぎ中の身である。 「次、そなたと我!」 唯の歌と三味線は“天下一品”というものでは無かったが、なんとなく人を集める不思議なものだった。 「おおっ。今日は良い出来だよ。これなら憂にお金を送ってもらわなくても生きていける」 演奏を終えて集まったお金を数えると、普段より多めだったようだ。 「「あっちで可愛い子が芸やってるって!」」 唯がお金を懐におさめ終えると辺りの人が大移動をしていた。 「今日は贅沢しちゃおうかな?久しぶりに鰻とか食べようか…」 「それじゃあ行くぞ!」 周りの人々の様子などさておいて唯が食べ物の事を考えていると、威勢の良いかけ声と共に鼓の音が鳴りはじめた。 「「わぁ!」」 さっきまで唯の演奏を聴いていた人が歓声をあげる。 唯が歓声を気にすると、鼓を叩いている女の子が空中回転をしていた。 少女の息をつかせない空中での連続技、時折見せるコマや傘を使った芸に人々は酔いしれた。 「凄い!あの子怖くないのかな?あ、今度は逆立ちした!」 気が付くと、同業者である唯自身も手に汗握って少女の芸を眺めていた。 「ありがとう~。ほんの気持ちで結構ですので、よろしければこちらに…」 結局、唯は芸が終わって少女がお金を集めだすまでその場を動かなかった。 少女は自分を中心にできた人の円をかごを片手にまわっていく。 「お、こんなに良いの?ここのお客さんは太っ腹だな。はい、そこのお嬢さんもどうだった?」 かごの中が溢れそうになってきて、遂に唯の立っている所まで少女が来た。 「…」 「あの…つまんなかったかな?」 唯は少女の笑顔に見惚れてしまっていた。 少女は無反応な唯に問いかける。 「え…凄く良かったよ!!」 「こんなに!?お嬢さん気前良いね。でも、これは貰いすぎだから…こんくらいでいいや」 少女が不安そうな顔をしたので、唯は後先を考えずに稼いだ銭を袋ごとかごに入れてしまった。 だが、少女はその袋から小銭を数枚とっただけであとは唯に返して次の客へと流れて行った。 「あは~っ。本当にここのお客さんは気前がいいな。これだけあれば随分旅が楽になるぜ」 「あの~…」 「ん?あ、さっきの気前がいいお嬢さん。どうかしたの?」 「いや、その…さっきの曲芸が凄く良くて、それで…私も旅芸人で…だから…その」 唯は帰り支度をしている少女に話しかけたが、緊張しているのか言いたい事をうまく伝えられなかった。 「ああ、同業者さんか。ここのお客さんは銭を惜しまないからお嬢さんも儲かったかい?」 「うん。普段の十倍くらい貰ったよ。これから何か美味しい物でも食べに行こうかと思って…」 「そりゃいいや。ちょうど良い時間だし…良かったら私も一緒に行って良いかな?あ、私は“律”って言うんだけど、お嬢さんの名前は?」 唯は神様に感謝した。今日は稼ぎも良かったし、なんて幸せなんだろうと。 「いや~、鰻なんて久しぶりだぜ」 「おいしいね。りっちゃん」 二人は鰻屋にて昼食をとることになり、同い年で同じ旅芸人ということもあって話のタネは尽きなかった。 「しかし、唯も苦労してるよな。私は天涯孤独みたいなもんだから良いけど。その歳で親が家を捨てちまって、妹さんを故郷に残して三味線一つで出稼ぎだもんな」 「何か…あらぬ尾ひれが…」 しかし、どこで間違えてしまったのか、律は唯が“頑張るお姉ちゃん“だと思ったようだ。 「…実は憂の送ってくれるお金で生活できてるなんて言えない…」 「ん?どうかしたのか?」 「何でも無いよ!」 結局、なかなか食べられない高価な食事だったが唯の頭の中は味よりも別の事で一杯になってしまった。 「ねえねえ、しばらくこの町で居るんでしょ?明日は一緒にやってみない?」 食事が終わって、別れ際に唯が律に提案した。 このままお別れは嫌だと思ったら…自然と言葉が出てきた。 だが、唯の誘いに律は困ったような顔をした。 「悪い。明日の朝にはここを発って次の町に行こうと思ってるんだ」 「そうなの?次の町って…私も一緒に行ったらダメかな?」 「…朝になったらすぐ発つけど、大丈夫か?」 律は少し考えた後、申し訳なさそうにもじもじしている唯に笑顔を向けた。 「大丈夫だよ!朝早いなら私寝ない方が良いかな」 「いや、旅するんだからちゃんと寝とけよ。そうだな、明日の日の出の時刻に街の西側の船着き場で会おうぜ。じゃあな!」 「え、りっちゃん!」 それだけ告げると、律は唯の静止を振り切って人ごみの中に消えていった。 唯も慌てて後を追ったが、律の方が圧倒的に足が速かったので追いつけなかった。 「はぁはぁ……りっちゃんて旅芸人になる前は飛脚だったのかな…」 走りつかれた唯は約束の明日に備えて早めに宿で休むことにした。 「楽しみすぎて眠れないよ。夜だから三味太も弾けないし…」 明日の支度を済ませて早目に床に就いたはいいが眠れない。 寝ないと明日辛くなると思えば思うほど悪循環で余計に眠れなくなっていく。 「水でも飲もうかな」 唯が水を飲もうと台所へ行くと、夜中のはずなのに人が大勢いた。 「宿泊者を全員起こせ!かまわぬ。抵抗する者が居れば斬れ」 何事かと思えば、武装した女達が宿の主人と揉めていた。 「何あの人たち…盗賊かな…!?」 危険を感じて唯は自室に戻ろうとしたが、その時に物音を立ててしまった。 「「貴様…よく似てるな。手配書にそっくりだ」」 物音を聞きつけた女達が唯を取り囲んで刃を向ける。 「貴様が”律”だな!よし、連れて行け」 「…え?ここ何処…」 殺されると思って放心状態になっていた唯が我に返ると、それまで居たはずの庶民的宿屋ではなく、立派なお屋敷のような宿屋が目に入ってきた。 「あの~此処は何処なんでしょうか?私はいったいどうなるんでしょうか?」 「さてな。我々の知ったことではないが、命まではとられないのではないか?」 「……」 身に覚えのない事で連れ去られて上に、殺されはしないまでも何かされる事は確定だと告げられて、唯は言葉を失った。 「ここで待て!しばらくすれば当主様がおみえになる」 宿屋の部屋で待たされる事半刻、階段を駆け上がってくる音がした。 「探したぞ律!」 その言葉が聞こえた時には、唯は知らない人に抱きしめられていた。 「あ~りつぅ~。会いたかったぞ。まったくお前は私をどれだけ心配させれば…って…あれ?律…じゃない?…うわぁぁぁぁぁ!!」 「何!?何なのこの人!?」 突然抱きしめられたと思ったら奇声を発して騒ぎ出したので、さすがの唯も気が動転して混乱してしまった。 「失礼、我が家の者がとんだ無礼を…旅の者と申されたな。よろしければお詫びもかねて今宵はごゆるりと」 あれからいろいろと揉めたりしたが、どうやら唯が無関係であることが解ってもらえたようだ。 唯をさらっていった者の主は秋山澪といい、東国の大名の跡取り姫君ということらしい。 「律さんて私に似てるんですか?」 この時点で澪が探しているのが昼間に出会った”律”であると、なんとなく唯は気が付いていたのであえて律と出会ったことは口にしなかった。 澪は律と聞いたとたんに顔をほころばせて流れるように語り始めた。 「似てるよ。寝る前の律は前髪を下してるからそっくりだ。あぁ、律…どうして居なくなってしまったんだ」 「大切な人なんですね」 自分の世界に入り込んでいる澪に当たり障りのないことを返す唯。 「なんてったって律は私の妻になるんだからな!律…私は律が忍びの鍛錬をさせられている時から10年以上律を手に入れる日を待っていたのに…」 ―――絶対この人勘違いしてるよ――― ”律”と言う度に澪がきつく抱きしめてくるのが鬱陶しかったが、何か粗相をして因縁をつけられても困るので、唯は大人しくしてやり過ごした。 「急がなきゃ…もうとっくにお日様出ちゃってるよ!」 散々澪の律話しを聞かされたらお日様が昇っていた。 唯は慌てて元居た宿屋に三味線を取りに帰り、西の船着き場までの路を走る。 唯が船着き場に着いた時、そこに律の姿は無かった。 「りっちゃん…まさか!あの人達に…」 唯の脳裏に昨夜の迷惑な姫様達の顔が浮かぶ。 「あのお姫様に捕まって東国に連れて行かれちゃったのかな…」 もしかして律が来ないかなと辺りを見回しても、やっぱり律は居ない。 「その三味線…あんたが唯って娘かい?」 「はい?」 船着き場周辺を歩いていると年配の女性に声をかけられた。 「これ、名も告げないから何処の誰かわかんないけど、あんたにって預かったんだよ。確かに渡したからね」 年配の女性は唯に手紙を渡して去って行った。 「もしかして…また難儀な事に巻き込まれたり…」 怪しい手紙を恐る恐る読んでみる。 唯へ 昨日は姫様が迷惑かけて申し訳ない。 唯を傷つけるような事をしたら助けようと思ってたけど、無事で良かったよ。 さて、本題なんだが 約束破って悪いな。 唯と一緒には行けない。 知ってると思うけど…私はまだしばらく姫様から逃げないといけない。 今はまだ楽に逃げられてるけど、この先手荒な事をしてくるかもしれないから一人が良いんだ。 勘違いしないでくれよ? 唯に一緒にって誘ってもらった時、私は凄く嬉しかったんだぞ。 たった数刻だったけど、初めて友達ができたみたいで…嬉しかった。 私はもうしばらく西の方を流れてみようと思う。 そうすれば、いい加減姫様も諦めてくれるだろ。 だからさ、私のごたごたが片付いたら…唯の隣りで鼓叩かせてくれないか? なんてな… 元気でな唯。 またいつか会える日を楽しみにしてる。 律 「りっちゃん…無事だったんだね。ちょっと遠いけど、私も西の果てまで旅してみようかな」 唯は三味線を片手に旅を再開した。 唯と律の二人がこの後どうなったのか? 数百年後の未来には何の記録も残されていないので定かではない。 ただ、たとえ再び相見えることが無くとも、繰り返す四季にただ一度きりの思い出を重ねて強く生き抜いたことだけは間違いないだろう。 「りっちゃんおぃ~っす」 「待ってたぞ唯。今日のおやつはシュークリームだってよ!」 end
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このページはスレに掲載されたSS等の置き場です。 スレに掲載されたSSです シナリオ名 元スレ 実際のセッションスレ 始まり 1スレ目1- - 時代の部屋 1スレ目45- 音の森 1スレ目693- 2016年宇宙の旅_SS こ↑こ↓ 2016年宇宙の旅 このwikiでのSSです シナリオ名 死にたがり電車
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幕間SS一覧 このページではダンゲロスSS裏Raceに投稿された幕間SSを表示します。 作者 タイトル 文字数 登場キャラクター 臥間 掏児 ザ ファスター レッグメン 684字 仕橋 王道 パン崎努 And the story ends. But… 13,560字 All Characters 闇雲 希 SSRaceエピローグ 11,154字 ???
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元スレURL 凛「西木野SS総合診療所...?」 概要 真姫ちゃんがSSを治療する 次作 にこ「西木野SS総合診療所」真姫「鬱病治療よ!」 タグ ^西木野真姫 ^μ’s ^コメディ 名前 コメント
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元スレURL 【SS】サヤ恋ダイアリー 概要 サヤさんが好きすぎるレンレンの日常withリエラ タグ ^葉月恋 ^Liella! ^サヤ ^短編 ^れんサヤ 名前 コメント
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条件:送迎場クリア クリアすると魔法使いの家[ID:1101]のコード失効 1体のみ 敵 HP LV 種族 隊列 火 水 風 地 聖 邪 雷 スタン 止 毒 痺 眠 盲 菌 石 死 特殊 アシネム試作型 12 機械 前列 0 0 0 反撃 テームズ試作型 12 機械 前列 0 0 -1 反撃 ナギニー試作型 12 機械 前列 反撃 ラムザ試作型 12 機械 前列 0 -1 反撃 ドロップ アイテム名 種類 攻撃 防御 魔攻 魔防 価値 備考 アシネム試作型テームズ試作型ナギニー試作型ラムザ試作型 テンテァルフォの種 消費 0 0 0 0 5 ランダムでステータスアップ! ※アシネム試作型 ブリキのうで 腕甲 0 3 0 2 200 地属性 ※テームズ試作型 ガラスのうで 腕甲 0 3 0 2 200 水属性 ※ナギニー試作型 トタンのうで 腕甲 0 3 0 2 200 風属性 ※ラムザ試作型 レンガのうで 腕甲 0 3 0 2 200 火属性 ※はレア コマンド アシネム試作型 クラッシュ《全・物》 ハードクラッシュ《全・物》 アサルト《単・物》 テームズ試作型 セイバー《単・物》 ハードセイバー《単・物》 アサルト《単・物》 ナギニー試作型 ツインショット《2・物》 トリプルショット《3・物》 アサルト《単・物》 ラムザ試作型 ラッシュ《1-3・物》 ハードラッシュ《2-4・物》 アサルト《単・物》
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ねぎぼうの140文字SS【7】 1.ラブせつで『君の傍』/ねぎぼう サウラー君の傍受したというリンクルンの通信データというのはこれね。 “せつな!今補習が終わったよ” “もう家に帰っているわよ” “ほんと?ごめん……” (ノイズ) インフィニティの話はさすがにしていないようね。 でも、サウラー君いい仕事してくれたわね。 特定できたわ。あの子たちの住家も…… 2.ラブせつで【 無理しちゃって 】/ねぎぼう 大会以来久しぶりにせつなとラブに出会った美希。 「せつなにはね、四つ葉町の楽しい思い出をたっくさん持って行って欲しいんだ」 ラブの明るすぎる笑顔。 「この街をよく見ておきたいって言ったら付き合ってくれたの。悪いことしたわ」 名残惜しさと二人でいる喜びを申し訳なさで隠す。 (無理しちゃって) 3.ラブせつで『人生で一番』/ねぎぼう 突然出逢って、探していた夢が見つかった。 再び出会えて、一番美味しいドーナツと幸せの素を知った。 本気で心配してくれた。許してくれた。やるべき事を知った。 そして、苦しんでいるのが……貴女だった。 何も出来ない?いや、そんなことない! 全てをかけるよ。 人生で一番好きになった貴女だから。 4.ラブせつで『誰にも渡さない』/ねぎぼう “誰にも渡さない……” 「ピーチはん、昨日はえろううなされとったで?大丈夫なんか?」 「……大丈夫!元気一杯だよ」 「やっぱり、パッションはんのこと……」 「わかってる。せつなの夢だもん。応援するのが家族でしょ?勿論タルトの夢も、だよ!」 (ピーチはん、家族やったらそうなんやろかなあ) 5.ラブせつで『未送信メール』/ねぎぼう 『ラブ、補習お疲れ様(^-^)』 せつなからメールが入っていた。 返信を打ち込んでいると、 「ラブ!」 「せつな!待っててくれたんだ」 ―― (そろそろスマホかなあ) 未送信メールがあることに気付く。 『ありがとう(^O^)すぐ帰るね!せつなだいすき』 あの日の思いもメールボックスに残ったまま。 *6はこの続きです。 6.ラブせつで【 もう会えないひと 】/ねぎぼう この未送信1件が気にかかったまま何日かが過ぎた。 そんなある日、けりをつけるように最後の送信ボタンを押した。 ―― 「ただいまー!あいぽん5にタダで機種変できたんだ」 「ラブ!すぐ帰るって言っていたわね?」 「あ!ごめん、そのまま送っちゃってた」 (今は、もう会えないひとじゃないんだ) 7.ラブせつで『ちょっと黙って』/ねぎぼう 「冷蔵庫の限定秋栗ドーナツ、まさか?」 「私、食べていないわよ。名前書いてたんでしょう?」 「前に読めなかったって言って食べちゃったじゃん」 「読める字書かないと」 「んも~」 「ピーチはんもパッションはんもそないに……」 「タルトはちょっと黙ってて!って、その口元に付いてるのは何?」 8.ラブせつで『迷子のお知らせ』/ねぎぼう “迷子のお知らせです” 「ママー!」 「ありがとうございます」 「よかったね」 ―― 「あたしも小さいころ迷子になっちゃってね。優しいおねえさんが一緒に探してくれたんだ。恩返し、かな?」 「あの子のお母さん、そのおねえさんじゃないのよね?」 「うん、でも、応えられるような気がするんだ」 9.キュアミューズ(黒)×キュアエース/ねぎぼう キュアミューズ(黒)とキュアエースがフュージョンしたら? ―― 「もう少しで5分よ」 「ミュースショット!ばきゅ~ん!1、2、3、フィナーレ!」 ”ラーブグーグー” ネガジコチューは浄化された。 キュアミュースはロックを外す。 カチャ、プシュー! 「ぷはぁ~」 マスクの下から汗だくのア久里の笑顔。 10.ラブせつで【 それ、半分ちょうだい 】/ねぎぼう ラブが最後の1個というカボチャのケーキを私にくれた。 じっと見ているから 「それ、半分ちょうだい」 とでも言うのかと思って割ろうとしたら、 「ダメ!そのケーキはね、二人で半分こして一緒に食べたら幸せになれるんだよ。 だから、これは持って帰って……待ってる人とね」 優しい顔で、言われたの。 ※カボチャのケーキはぴかりが丘のアレです。